遺言書作成のポイント

遺言の種類同様、遺言書の書き方も遺言の種類ごとに法律で定められています。

特に自筆証書遺言は様式不備によって法的に無効となる場合もありますので、注意が必要です。

ここでは、遺言書の大半を占める自筆証書遺言と公正証書遺言の書き方について確認していきましょう。

遺言書共通のポイント

「誰に」「何を」をしっかり記載することが大切です。

「誰に」

  • 家族であれば、「妻○○」「長男○○」など名前を明記します。
  • 第三者へ遺贈するような場合は、「住所○○ 氏名○○」と記載しましょう。

「何を」

  • 不動産は登記簿謄本どおりに書く必要があります。

    土地なら所在・地番・地目・地積、建物なら所在・地番・種類・構造・床面積を表示します。
  • 預貯金は銀行名と支店名を特定して記載します。
  • 株式は証券会社名または株式発行会社を記載します。

※その他の財産はまとめて「その他の残余の遺産を全て○○に相続させる」と記載することもできます。この記載方法は、本人が遺言書に書き漏らしたわずかな財産についての争いを防ぐためにも有効です。

その他

  • 「付言事項」(遺族への想い、遺言内容の理由など)は必須事項ではないですが、遺族へのラストメッセージとして記載することをおすすめします。

    また遺言内容の理由を書くことで相続人に遺言者の意思が伝わり、承継がスムーズに進む効果もあります。

自筆証書遺言のつくりかた

自筆証書遺言の書き方のポイントは以下の通りです。

全文を自筆で書く

代筆やワープロ・パソコンでの作成は無効です

年月日を明記する

特定できる年月日であることが必要です。

「平成○年○月」や「平成○年○月吉日」では無効になります。

また、日付印の使用も無効です。

署名と押印をする

本人を特定できる署名であれば有効ですが、極力戸籍上の氏名で署名しましょう。

押印は認印でもいいですが、本人性を高めるためにも実印が望ましいです。

加除訂正は正確に

加除訂正のしかたは一般文書より厳格に定められています。

2本線での訂正・訂正印の押印・加除訂正した旨の付記を忘れないようにしましょう。

その他

様式(縦書き・横書き)や用紙の種類、大きさ、筆記用具は自由です。

また、封入・封印も自由ですが、秘密保持の観点からも封入・封印しておくほうがよいでしょう。

公正証書遺言のつくりかた

公正証書遺言を作成するには、遺言書の案以外に様々な書面を用意する必要があります。

それをふまえて、公正証書遺言の流れを見ていきましょう。

1.相続人調査

まず、ご自身の戸籍謄本を取得します。

あわせて、ご自身と推定相続人の続柄がわかる戸籍謄本を取得し、ご自身と推定相続人の身分関係を確定します。

(場合によっては、除籍謄本や改製原戸籍の取得も必要になります)

身分関係が確定すれば相続関係図を作成して相続関係を整理しましょう。

2.財産の調査

ご自身のプラス財産とマイナス財産を書き出して、財産の全体像を把握しておきましょう。

マイナス財産とは、債務や未払金、保証債務などをいいます。

保証債務は忘れがちなので、注意しましょう。

不動産があれば、登記簿謄本・固定資産税評価証明書も取得しておきましょう。

3.分割案を考える

財産をどのように分けるかを、まずは大まかに考えてみましょう。

そして、相続人間の公平感などを考慮して調整していきます。

※ここまでは、自筆証書遺言を作成する場合も同様のステップをふむことをおすすめします。遺言書への添付は不要ですが、推定相続人や相続財産の把握・整理がしやすくなります。

4.遺言書の案をつくる

「誰に」「何を」を明確に記載します。

5.必要書類をそろえる

公正証書遺言作成に必要な基本的な書類は以下の通りです。

  1. 遺言書の案
  2. ご自身の印鑑証明
  3. ご自身と、ご自身と推定相続人の続柄がわかる戸籍謄本など
  4. 推定相続人以外に遺贈する場合は、その人の住民票
  5. 不動産の登記簿謄本・固定資産税評価証明書
  6. 通帳、有価証券明細などのコピーなど
  7. 証人の住所・氏名・生年月日・職業を記載した書面
  8. 遺言執行者の住所・氏名・生年月日・職業を記載した書面(遺言執行者を指定する場合)

※詳細はお近くの公証人役場に問合せたほうが良いでしょう。

6.上記書類を公証人役場に提出

このとき、証書作成期日の指定を受けます。

7.公証人役場で公正証書遺言作成

指定日に、証人2人とともに公証人役場に赴きます。

ご自身は実印、証人は認印を持参します。

※推定相続人(相続人になる可能性のある人)および受遺者本人とその配偶者および直系血族・未成年者・公証人の関係者などは証人になることができません。

※証人は親しい友人がいればその方にお願いすることが望ましいですが、財産内容や家庭内の事情を知られることはあまり好ましくありません。そのため守秘義務のある専門家に依頼することが望ましいでしょう。

遺言書の見直し

遺言書は作成したあとでも適宜見直すことが必要です。

  • 資産の変動があったとき
  • 推定相続人の変動(子が死亡したなど)があったとき
  • 相続に関する法律の改正があったとき
  • 定期的な見直し(5年に一度など)

のタイミングで見直しましょう。


遺言書作成は法律面などでいろいろ制約はありますが、まずは気軽に書いてみることをおすすめします。

一度書いてみて心配になれば専門家に聞いてみましょう。

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カテゴリー:遺言について

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