相続手続きの流れ
遺産相続には様々な手続きがあります。
そして、相続手続の多くは法律で期間が決まっています。
うっかり期間が過ぎてしまうと、思いもよらない損害やトラブルが発生することがあります。
主な相続手続きの流れは以下をご確認ください。
相続手続きの流れ
1.被相続人の死亡(相続開始)
- 死亡届の提出
- 火葬許可申請書の提出
- ご葬儀の準備
※死亡届の提出期間は死亡を知った日から7日以内です。
(火葬許可申請書は通常死亡届と同時に提出します)
2.ご葬儀
3.初七日法要
- 遺言書有無の確認
※自筆証書遺言書・秘密証書遺言は必ず家庭裁判所の検認後に開封しなければなりません。
(検認手続きには戸籍謄本等の取り寄せが必要です)
4.四十九日法要
- 相続人の確認
- 相続財産、債務の概要調査
※相続人の確認のために、戸籍謄本等の取寄せ・相続関係図の作成を行います。
5.相続放棄・限定承認
※相続開始を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所への申立が必要です。相続放棄・限定承認をしない場合は単純承認となります。
6.所得税の申告と納付
- 相続財産、債務の調査
- 相続財産の評価
※所得税の申告・納付の期間は死亡後4ヶ月以内です。(準確定申告といいます)
7.遺産分割協議
- 遺産分割協議書の作成
※相続人間でどの財産を誰が引き継ぐかを協議します。
8.相続財産の名義変更
- 不動産の名義変更
- 預貯金、株式などの名義変更
9.相続税の申告と納付
※期間は相続開始後10ヶ月以内です。
基本的な流れは上記のとおりとなります。
多くの手続きがありますので、心身ともに疲弊している遺族の方々にとっては大変ですが、スケジュールをきっちりと押さえて確実に手続きをする必要があります。
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相続人の調査
相続手続きを進める上で、まずは法定相続人を確定することが必要です。
万が一法定相続人を見落として手続きを進めてしまうと、手続きが無効になってしまう可能性があります。
相続手続きのタイムスケジュールを押さえながら、早急に、かつ確実に行わなければなりません。
詳しくは、以下をご覧ください。
戸籍謄本の取寄せ
法定相続人を確定するために、まず被相続人の戸籍謄本を取寄せます。
被相続人の出生時期まで遡って取寄せ、更に相続人になる可能性のある人の戸籍も順次取寄せて相続人を確定します。
戸籍は、婚姻や離婚、再婚、転籍、改製などによって途切れていることが多いので、戸籍・除籍・改製原戸籍などを丁寧に読み解いて取寄せる必要があります。
このために、何度も役所に戸籍取得の請求をすることになりますし、本籍地が何度か変わっている場合には、それぞれの本籍地の役所に請求をすることになりますので、相当な時間と労力が必要となります。
相続関係図の作成
戸籍の解読は複雑な場合がありますので、相続関係を整理して明確にする必要があります。
そのために、必要な戸籍を全て取寄せて法定相続人を確定したうえで相続関係図を作成します。
法定相続人とは?
法定相続人とは、法律の規定によって相続人になる人のことをいいます。
遺言がある場合は原則として遺言で指定されたとおりに遺産分割がされますが、遺言がない又は遺言が法律的に有効でない場合は原則として法定相続の規定によることになります。
法律では、相続人になる人の順位と相続財産の分配割合が決められています。
相続人になる人の順位
■配偶者は常に相続人
被相続人の配偶者は常に相続人になります。
但し婚姻届を出している戸籍上の配偶者に限られますので、どんなに長い同居期間があっても内縁関係の人は法定相続人にはなりません。
■第一順位は直系卑属
直系卑属(故人の子、孫、ひ孫)は第一順位の相続人になります。
被相続人に子がいれば、その子は常に相続人になります。
また、子に相続の権利がない場合(死亡・欠格・廃除されている場合)で孫がいる場合は孫が、子や孫に相続の権利がない場合でひ孫がいる場合はひ孫が相続人になります。
これを代襲相続(だいしゅうそうぞく)といいます。
被相続人の養子や認知した子(非嫡出子(ひちゃくしゅつし)といいます)も相続人になります。
■第二順位は直系尊属
直系尊属(被相続人の父母、祖父母、曾祖父母)は第二順位の相続人になります。
第一順位の直系卑属がいない場合のみ相続人になります。
また、父母がいない場合は祖父母が、父母や祖父母がいない場合は曾祖父母が相続人になります。(代襲相続ではありません)
■第三順位は兄弟姉妹
被相続人の兄弟姉妹は第三順位になります。
被相続人に直系卑属や直系尊属がいない場合のみ相続人になります。
兄弟姉妹に相続の権利がなく兄弟姉妹に子がいる場合は、その子(被相続人の甥、姪)が代襲相続します。
但し、甥や姪に相続の権利がなくても甥や姪の子は相続人とはなりません。(兄弟姉妹の代襲相続は子までに限定されます)
相続財産の分配割合
法律で規定された相続財産の分配割合を法定相続分といいます。
法定相続分は、相続人の組み合わせによって異なります。
■相続人が配偶者のみ
配偶者が全ての財産を相続します。
■相続人が配偶者と子
相続分は配偶者が2分の1、子が2分の1となります。
子が複数いる場合は、2分の1を子の数で割った割合になります。
養子も同様の相続分です。
非嫡出子も相続権はありますが、相続分は嫡出子の2分の1となります。
■相続人が配偶者と父母
相続分は配偶者が3分の2、父母が3分の1となります。
父母が共に健在なら、それぞれ6分の1となります。
また被相続人が普通養子だった場合は、生家の実父母にも相続権があります。
■相続人が配偶者と兄弟姉妹
相続分は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1となります。
兄弟姉妹が複数いる場合は、4分の1を兄弟姉妹の数で割った割合になります。
父母の一方だけが同じ半血兄弟姉妹(異母兄弟姉妹・異父兄弟姉妹)の相続分は、被相続人と同じ父母から生まれた全血兄弟姉妹の2分の1となります。
■配偶者がいない場合
相続の順位に沿って、相続人となる人が全ての財産を相続します。
相続人となる人が複数いる場合は、相続人の数で割った割合となります。
遺言がない場合は法定相続によって相続財産を分配することが原則です。
ただし、相続人全員による遺産分割協議によって分配の割合を変えたり、特定の財産を一人に相続させることも出来ます。
特に、不動産や被相続人が経営者だった場合の事業資産を法定相続に従って共有名義にしてしまうと、後々のトラブルにつながる可能性がありますので、遺産分割協議によって単独名義にすることを検討するべきでしょう。
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相続財産の調査
相続人の確定とあわせて相続財産の調査が必要となります。
相続する財産(プラス財産)や債務(マイナス財産)を正確に把握することによって、
- 遺産分割協議のスムーズな進行
- 相続税が課税されるかどうかの判断
- マイナス財産が多い場合の相続放棄、限定承認の判断
をすることができます。
もし後から新たな財産が見つかった場合は、再度の遺産分割協議や相続税の修正申告が必要になります。
また、相続開始を知ってから3ヶ月経過してしまうと相続放棄、限定承認ができなくなってしまいます。
相続財産の調査も、早急・確実に行わなければなりません。
相続財産とは?
相続財産にはプラス財産とマイナス財産があります。
被相続人の債務などのマイナス財産も相続財産です。
プラス財産
現金・預貯金・有価証券・債権・不動産(土地・建物)・株式・生命保険金(受取人が被相続人本人とされている場合)・動産(自動車・宝石・家財など)など
マイナス財産
借入金・買掛金・保証債務・未払金(税金・家賃・医療費など)など
※被相続人が自営業者だった場合は特にしっかり洗い出す必要があります。
遺産分割の対象とならない財産
香典、死亡退職金、遺族年金、祭祀財産(墓地・墓石・仏壇・仏具)など
※みなし相続財産として相続税の課税対象となる場合があります。
注:遺産分割の対象と相続税課税対象は必ずしも一致しません。
※被相続人一身に専属するもの(扶養料請求権・生活保護受給権・身元保証債務など)は相続財産には含まれません。
相続財産の調査方法
預貯金
1.被相続人の通帳・キャッシュカードを確認
2.各金融機関へ名寄せ(同じ金融機関に複数口座がないかチェック)・残高証明書発行を依頼
3.他の預け入れが考えられる金融機関(主要銀行・ゆうちょ銀行・信用金庫など)にも同様に口座調査依頼
※通帳が見つからない場合や、通帳が発行されない場合(インターネットバンク)もありますので、しっかり調べる必要があります。
不動産
1.固定資産税納付書・権利証を確認
2.不動産所在地の市区町村役所から名寄帳・固定資産評価証明書を取得
※名寄帳により市区町村内の不動産(未登記含む)を確実に調査します。また、固定資産評価証明書は不動産の登記にも必要です。
3.法務局で公図・登記簿の調査
※公図を取得し、被相続人所有不動産周辺の土地も調査します(私道が共有名義になっている場合もあります)また、登記簿により相続開始時の名義や権利関係を明らかにします。
株式・有価証券
1.株券、証券や証券会社等からの郵便物、通帳等の口座記録を確認
2.証券会社等へ問合せ
※上場していない株式の場合は、株主名簿閲覧の必要がある場合もあります。
マイナス財産
1.被相続人名義の契約書、クレジットカード、所有不動産の登記簿(抵当権等を確認)及び被相続人宛ての督促状その他書面を確認
2.借入先から債務の残高証明書を取得
※相続人は被相続人のクレジット契約等について、個人信用情報機関に情報開示の請求をすることもできます。
相続財産目録の作成
相続財産調査が完了すれば、相続財産目録を作成します。
全ての財産を一覧にすることによって、遺産分割協議をスムーズに進めることが出来ます。
また、相続税が課税されるかどうかの判断や、相続放棄・限定承認の検討にも活用します。
書式やサイズは任意ですが、記載漏れのないように作成することが大切です。
相続財産の調査も、相続人調査と同様に漏れのないよう確実に行う必要があります。
また、相続放棄・限定承認の検討のためには調査を急ぐ必要があります。
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限定承認・相続放棄
相続すると、原則としてプラス財産もマイナス財産も全て引き継ぎます。
ところが、マイナス財産の方が多い場合には被相続人の残した借金の返済などに相続人が苦しむことになります。
こういった相続人を救済するために限定承認・相続放棄といった方法が規定されています。
これらは、相続開始を知ってから3ヶ月以内(熟慮期間といいます)に手続きする必要があります。
限定承認または相続放棄を選択しない場合は単純承認したことになり、被相続人の相続財産を全て(プラス・マイナス共に)引き継ぐことになります。
- 相続開始
↓ 3ヶ月以内に選択
- 単純承認・・・全ての権利・義務を無条件に引き継ぐ
- 限定承認・・・プラス財産の範囲内でマイナス財産を引き継ぐ
- 相続放棄・・・相続を放棄し、最初から相続人でなかったことになる
※熟慮期間内に限定承認・相続放棄の手続きをしなければ、単純承認したことになります。
単純承認とは?
単純承認とは、被相続人の相続財産に関する権利・義務を全て無条件で引き継ぐことです。
マイナス財産の方が多かったとしても、無条件で全て引き継ぐことになります。
単純承認の場合は特に手続きは必要ありませんが、以下の場合には自動的に単純承認となってしまいます。
- 相続人が熟慮期間内に、限定承認・相続放棄の手続きをしなかったとき
- 相続人が限定承認・相続放棄の手続き前に、相続財産の一部または全部を処分したとき
- 相続人が限定承認・相続放棄した後に、相続財産の一部または全部を隠したときや、相続財産の私的な消費をしたとき、限定承認の際に必要な財産目録に財産の一部を隠して書かなかったとき
単に熟慮期間が経過しただけでも単純承認となってしまいます。
熟慮期間内に、確実に相続財産の把握をする必要があります。
限定承認とは?
限定承認とは、プラス財産の範囲内に限ってマイナス財産を相続することです。
マイナス財産の方が多かった場合には、プラス財産を超えるマイナス財産分の返済などは免れることができますし、
プラス財産の方が多かった場合には、返済などをした残りのプラス財産を相続することができます。
相続財産のプラスとマイナスがはっきりわからない場合に有効といえます。
限定承認の手続きは以下の通りとなります。
- 必要な戸籍等の収集
- 土地・建物・現預金等の遺産目録の作成
- 熟慮期間内に家庭裁判所へ限定承認の申立
- 債権者や受遺者(遺贈を受ける人)へ限定承認をしたことの公告
- 財産管理人の選任
- 清算手続き
※限定承認の申立は相続人全員で行うことが原則です。相続人のうち一人でも単純承認をした人がいれば申立できませんので、注意が必要です。
また、手続きがかなり煩雑で税金関係も複雑になることがありますので、専門家に充分アドバイスを受けたうえで検討した方が良いでしょう。
相続放棄とは?
相続放棄とは、被相続人の財産を全く引き継がないことです。
相続放棄をする場合としては、以下のケースが考えられます。
- プラス財産よりマイナス財産の方が多いことがはっきりしているとき
- 被相続人が自営業者だった場合に、後継者のために他の相続人が相続放棄
- 被相続人の配偶者の老後の生活費を残すために子が相続放棄
相続放棄すると、最初から相続人でなかったことになりますので代襲相続も発生しません。(親が被相続人の場合で子が相続放棄しても孫に相続権が発生することはありません)
相続放棄は各相続人単独ですることができますが、相続人のうちの一人の相続放棄によって他の相続人のマイナスの相続分が増加したり、第一順位の相続人の相続放棄によって第二順位の相続人にマイナスの相続分が発生しますので、相続放棄の決定に際しては親族間で充分に話し合った方が良いでしょう。
相続放棄は、熟慮期間内に家庭裁判所に申述する必要があります。
相続放棄の手続きの流れは以下のとおりです。
- 必要な戸籍等の収集
- 熟慮期間内に家庭裁判所へ相続放棄の申述
- 家庭裁判所からの照会事項に対して回答
- 家庭裁判所にて申述受理
- 家庭裁判所から申述受理通知書の送付
手続き完了後には、債権者への提示等のために「相続放棄申述受理証明書」の交付を受けることができます。
一旦申述が受理されると簡単には撤回できません。相続放棄は借金の返済を免れるには有効な手段ですが、申立には慎重な判断が必要です。
限定承認も相続放棄も相続財産の状況によっては非常に有効な手段ですが、熟慮期間内に手続きをしなければ単純承認したことになってしまいます。
また、「3ヶ月という期間を知らなかった」「熟慮期間が過ぎれば手続きできなくなるとは知らなかった」という理由は通用しませんので注意が必要です。
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遺産分割協議書の作成
遺言書がない場合には、法定相続分での相続が原則ではあります。
但し、相続財産に不動産や被相続人の事業用資産などがある場合は、法定相続分に沿って共有名義にしてしまうと後々トラブルが発生する可能性があります。
また、相続人が法定相続に納得しない場合も考えられます。
このような場合には、遺産分割協議が必要になります。
遺産分割協議がまとまれば、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議
遺産分割には3つの方法があります。
遺産の内容と相続人の意思によって、適切な分割方法を選びます。
尚、遺産分割協議は相続人全員が参加し、同意しなければ無効となります。
(必ずしも「同席」する必要はありません)
現物分割
「土地・建物は妻が、預貯金は長男が、株式は長女が相続」というように、個々の財産をどの相続人が取得するのかを決める方法です。
もっとも一般的な分割方法です。
換価分割
「土地・建物を売却してその代金を妻・長男・長女で分割」というように、遺産を売却してその代金を分割する方法です。
主な財産が不動産だけだったり、現物分割するほど遺産の種類がない場合に、この方法を取ることがあります。
代償分割
「妻が土地・建物を相続する代わりに、妻は長男に1000万円を支払う」というように、ある相続人が遺産の現物を相続し、他の相続人の相続分は自分の財産から払うという方法です。
遺産が事業用資産の場合で、後継者が単独で相続する必要があるときに有効な方法といえます。
但し、この方法は遺産の現物を相続する人にある程度の財産がないと実行できません。
※これらの分割方法を適宜組み合わせて公平に協議を行い、相続人全員の合意に至ることが大切です。
(例えば、現物分割を基本にして、不公平があれば一部を代償分割にして現金支払で調整する、といったことも必要です)
※相続人に未成年がいる場合は?
未成年は遺産分割協議はできませんので、代理人をたてる必要があります。
通常は、親権者が未成年の代理人となります。
但し、その親権者も相続人である場合には、親権者は代理人になることができません。(未成年の子と代理人(=親権者)との利益が相反するからです)
また、親権者が相続人でない場合でも、未成年の子が複数いる場合は親権者は一人の子の代理人にしかなることができません。
このような場合には、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる必要があります。
特別代理人の候補者は指定することが出来ますので、利益の相反しない親族を候補者とすることもできます。
また、添付書類として遺産分割協議書の案が必要です。
遺産分割協議書の作成
遺産分割協議がまとまれば、遺産分割協議書を作成します。
作成は任意ですが、不動産の名義変更、相続税の申告、預貯金の払い戻しのとき等に必要となります。(この場合、相続人全員の署名と実印押印、印鑑証明の添付が必要です)
書式は特に定められていませんが、「どの遺産を」「誰が取得したか」を明確に記載しなければなりません。
遺産分割協議が不調に終わったときは?
「遺産分割協議がまとまらない」「協議自体ができない」といった場合は、家庭裁判所に調停または審判の申立をすることが出来ます。
通常は以下の流れとなります。
- 調停の申立
※家事審判官と調停委員が当事者の話を聞いてアドバイスしますが、あくまでも当事者の話し合いによる合意を目指すものです。 - 審判の申立
※調停が不調に終わった場合は審判の申立をします。ここでは強制的に審判が下されます。 - 異議申し立て
※審判に異議がある場合は、高等裁判所に異議申し立てをすることができます。
遺産分割協議書は一定の手続きの場合に必要となるものですが、それ以外の場合でも後日のトラブルを避けるために作成しておいた方が良いでしょう。
また、遺産分割でもめないためには予め遺言書を作成しておくことが最も有効です。
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不動産の名義変更
遺言や遺産分割協議によって相続人が取得する財産が確定すれば、財産の名義変更を行います。
後日のトラブルを未然に防ぐためにも、速やかな手続きが必要です。
不動産の名義変更
不動産を名義変更するには、法務局へ所有権移転登記の申請をする必要があります。
登記については特に期限はありませんが、速やかに手続きしないと、
- 不動産の売却や抵当権の設定ができない
- 不動産を相続した人が亡くなったときの手続きが複雑になる
- 他人が不動産を一定期間占有していた場合、時効取得によって他人の財産になってしまう
などのトラブルが発生する可能性があります。
速やかに手続きをすすめましょう。
不動産の名義変更の流れ
不動産の名義変更の大まかな流れは以下の通りです。
- 遺言書や遺産分割協議書によって相続財産の分割方法を確定
- 必要書類の準備
- 登記申請書の作成
- 法務局へ申請
- 登記完了(申請から約1週間)
不動産の名義変更に必要な書類
基本的な必要書類は以下の通りです。
- 登記申請書
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 法定相続人の戸籍謄本
- 相続人(不動産取得者)の住民票
- 固定資産税評価証明書
- 遺産分割協議書または遺言書(法定相続の場合は不要)
- 法定相続人の印鑑証明書(法定相続の場合は不要)
なお、登記申請時には登録免許税の納付が必要です。
相続登記の場合は、固定資産税評価証明書に記載されている価格×1000分の4が登録免許税額となります。
不動産の名義変更は相続人ご自身で手続きすることも可能ですが、相続の内容によって書式や必要書類が変わる場合がありますので、専門家に依頼する方がスムーズに手続きを進めることができます。
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預貯金その他財産の名義変更
預貯金の名義変更
銀行などの金融機関は口座名義人の死亡を知ったとき、その口座を凍結します。
口座凍結によって、入出金・送金・引き落としなどが出来なくなってしまいます。
これは相続財産の保全のためにされる措置ですので、保全面で心配な場合はむしろ早めに金融機関に口座名義人の死亡を伝えておいた方が良いでしょう。
預貯金の引き出し・名義変更に必要な書類
口座凍結後に預貯金の引き出しや名義変更を行うときの基本的な必要書類は以下の通りです。
- 金融機関所定の預金払戻請求書(名義変更時は名義書換請求書など)
- 被相続人の預金通帳と届出印
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 遺産分割協議書(遺産分割協議前の引き出しなら不要)
※遺言書による場合や調停・審判による場合は必要書類が異なります。
※金融機関によって手続きや必要書類が異なる場合がありますので、詳しくは各金融機関への問い合わせが必要です。
その他の財産の名義変更
その他の財産の名義変更の手続き先、必要書類は以下の通りです。
株式の名義変更
・手続き先
- 上場株式・・・被相続人の株式取引口座を管理する証券会社
- 非上場株式・・・株式発行会社
・必要書類
- 上場株式・・・株主名義書換請求書、被相続人の戸籍謄本、遺産分割協議書、相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書など
- 非上場株式・・・株式発行会社により異なりますので、会社への問合せが必要です。
自動車
・手続き先・・・陸運局
・必要書類・・・移転登録申請書、自動車検査証(期限が有効なもの)、被相続人の戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本及び印鑑証明書など
※軽自動車の場合は手続き先・必要書類が異なります。
電話加入権
・手続き先・・・所轄のNTT
・必要書類・・・加入承継届、被相続人の戸籍謄本、新たな名義人の戸籍謄本など
ゴルフ会員権
・手続き先・・・各ゴルフクラブ
・必要書類・・・名義書換申請書、被相続人の戸籍謄本、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書、新たな所有者の戸籍謄本など
※いずれも手続き先・相続の内容によって必要書類が異なる場合がありますので、詳しくは各手続き先への問合せが必要です。
いずれの相続財産の名義変更も遺産分割の方法や内容の確定とあわせて、手続き先・手続き方法・必要書類をしっかり確認しながら進める必要があります。
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相続税について
遺産を相続した全ての人が必ず相続税を納めるわけではありません。
正味の遺産額が基礎控除額の範囲内なら、相続税を納める必要はありません。(実際に相続税が課税される人は全体の5%未満と言われています)
正味の遺産額とは?
正味の遺産額は、
遺産総額-非課税財産-葬式費用-債務+相続開始前3年以内の贈与財産 |
---|
で計算されます。
非課税財産とは、
- 墓所、仏壇、祭具など
- 国や地方公共団体などに寄付した財産
- 生命保険金のうち、法定相続人の数×500万円
- 死亡退職金のうち、法定相続人の数×500万円
などが該当します。
基礎控除額とは?
基礎控除額の計算式は、
5000万円+(法定相続人の人数×1000万円) |
---|
となります。
例えば法定相続人が3人なら、
5000万円+(3人×1000万円)=8000万円
となり、正味の遺産額が8000万円以下なら相続税は「0」となります。
基礎控除額を超えた部分が課税遺産となり、相続税算定のベースになります。
相続税総額の計算
①課税遺産を一旦法定相続分で分けて、
②法定相続分毎に税額を計算し、
③合計して相続税総額を求めます。
法定相続分毎の税額計算は以下の速算表で計算します。
法定相続分に応じた各人の取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
3億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円超 | 50% | 4,700万円 |
例えば、ある相続人の法定相続分に応じた取得金額が5000万円とすると、
(5000万円×20%)-200万円=800万円
が、その相続人の相続税額となります。
相続税納付額の算定
①各人の相続税額を一旦合計し、
②各人の実際の相続割合で按分し、
③各人に当てはまる税額控除を差し引いて、各人の最終的な納付税額を算定します。
尚、財産をもらった人が被相続人の配偶者、父母、子供以外の場合は、税額控除を差し引く前の相続税額にその20%相当額を加算した後、税額控除額を差し引くことになります。
配偶者控除
配偶者の取得した財産が、
法定相続分以下または1億6000万円以下
の場合は相続税は「0」です。
未成年者控除
未成年者が満20歳になるまでの年数×6万円を控除することができます。
障害者控除
障害者が満70歳になるまでの年数×6万円(特別障害者は12万円)を控除することができます。
贈与税控除
被相続人から相続開始3年以内の贈与を受けた人は、その際に支払った贈与税額を控除することができます。
その他に相次相続控除・外国税控除などがあり、これらの控除を活用することによって相続税納付額を抑えることができます。
また、控除を受けるにあたっては遺産分割協議が完了していることが条件となる場合があります。
相続税の申告・納付は相続手続の中では最終局面になりますが、課税の可能性がある場合は当初からしっかりスケジュールをたてる必要があります。
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相続Q&A
Q.連れ子は相続人になりますか?
A.連れ子は相続人にはなりません。
連れ子を相続人とするには、あらかじめ養子縁組をしておくことが必要です。
子で相続人となるのは実子、養子、特別養子、非嫡出子(認知した子)です。
※非嫡出子の相続分は実子等の2分の1となります。
Q.前妻または前夫の子は相続人になりますか?
A.被相続人の実子なら相続人になります。
この場合、親権がどちらにあるかは関係ありません。
Q.養子は相続人になりますか?
A.養子は実子と同じく相続人になります。
養父母の相続人にもなりますし、実父母の相続人にもなります。
但し、特別養子は養父母のみの相続人となります。
Q.長年同居している内縁者は相続人になりますか?
A.同居の期間にかかわらず、相続人にはなりません。
内縁者にご自身の財産を残すには、予め贈与をするか遺言書を作成しておけば良いでしょう。
Q.相続人のうち一人が行方不明のときは?
A.行方不明であっても相続人としての権利はあります。
もし行方不明者を無視して遺産分割協議をした場合、その協議は法的に無効となります。
まずは戸籍などを辿って生死・所在場所を確認するべきです。
生死などの確認が出来なければ家庭裁判所に不在者財産管理人の選任申立を行い、不在者財産管理人が行方不明者に代わって遺産分割協議に参加することになります。
この場合、不在者の相続分を法定相続分より減少させるような協議は認められません。
結果、財産が不在者と他の相続人との共有になってしまいますので、不在者が見つかる可能性がないのであれば家庭裁判所に失踪宣告の申立をすることも考えられます。
失踪宣告によって不在者は死亡したものとみなされますので、不在者の財産について相続が発生し不在者との共有状態は解消することになります。
Q.相続人のうち一人が認知症で判断能力がない場合は?
A.家庭裁判所に成年後見の申立をすることが考えられます。
この場合、選任された成年後見人が被成年後見人(認知症の人)に代わって遺産分割協議に参加することになります。
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